2010年12月31日金曜日

2010年、自分的ベストアルバム (Best Album 2010)

ご無沙汰しております。
ここに書けていない映画もぼちぼちあるので、記録しとかないと、と思いつつバタバタと日が経っちゃってます。


さて、行く年、来る年なタイミングに合わせ、今年出た&買った中のフェイバリットアルバムを選んでみたいと思います。


1.『The Pursuit』 (Jamie Cullum)
2. 『Mediocre』 (Ximena Sarinana)
3. 『Contra』 (Vampire Weekends)
4. 『Tin Can Trust』 (Los Lobos)
5. 『回転木馬に僕と猫』 (中山うり)


日本よりすこし遅れて発売されたJamieのアルバム、飽きずにずっと聴いていました。はまり具合と外し具合の微妙な加減がいいねぇ。彼のBBCの番組も、ネットで聴けるのでよく聴いています。選曲のセンスもジャズの正統派からちょっと外したジェイミー的な人まで、面白いのです。もちろん日本からも聴けると思いますし、イギリス英語の耳馴らしにもどうぞ。(BBC

ヒメナ・サリニャナちゃんは今年の掘り出し物で、偶然の出会いに感謝。多分本人はまだ若いので強い自発的意思で動いているのではないような印象…きっとプロデューサーとかバックのスタッフが優秀なんだろうなあ。でも曲も声もいいし、次のアルバムが楽しみです。彼女、メキシコのハーバル・エッセンス・シャンプーのモデルでもあるし、映画トワイライトシリーズのメキシコ版の主題歌を歌っていたり、メキシコではアイドルなんですよねきっと?しかしアイドルにはまらないいい唄歌っているわよ。

バンパイア・ウィークエンドのアルバムは曲がはっちゃけている上に歌詞まで楽しい!一見何も考えていなさそうな気合いの無いこのジャケットにしても、なんか…ひょっとして奥深いのか?どことなく好感を抱いてしまう不思議さ。

ロスロボスはラテンのメランコリーが自分のテイストにぴたっとくっつく音楽。NPRのTiny desk concertではほんとに彼らの立派なガタイが狭いところに詰め込まれた様子でお気の毒でした。。

基本的に洋楽志向ではないはずの私が、ここまで洋楽ばかりな珍しい年。一つだけ入った邦楽が中山うりちゃんのミニアルバム。彼女がiTunesに帰ってきた事は喜ばしいニュースです。9月に出たアルバムより、そして私が持っている中ではこの12月に出たものが最高傑作のような気がします。表題曲はみんなのうたになっているみたいですね。曲だけでなくタイトルも好き。

その他、負けず劣らずよく聴いた好きなアルバム達。

Corinne Bailey Rae 『The Sea』
青葉市子 『剃刀乙女』
The Weepies  『Be My Thrill』
Belle & Sebastian 『Write About Love』
くるり 『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』

来年も好きな音楽に沢山出会えますように!

2010年11月21日日曜日

メキシコ革命100年記念短編映画集 REVOLUCIÓN (2010)

どうも昨日(11月20日)と今日の限定での公開らしいのですが…
ベルリン映画祭にも出展された、メキシコの短編オムニバス映画「REVOLUCIÓN」が、Youtubeなどweb上に公開されています。

監督は10人で、それぞれ持ち時間が約10分。監督の中には世界的にも活躍する俳優、ガエル・ガルシア・ベルナルと、ディエゴ・ルナも名を連ねていて、それぞれ1作品ずつ参加しています。



*注)やはり週末が終わると映画は非公開にされましたので、トレイラーを貼り直しますね。ちなみに元のリンクはここでした(http://www.youtube.com/v/iQ0Z4lzWJEU?)






タイトルも「REVOLUCIÓN」ということで、メキシコ革命から100年経った、今のメキシコからみた革命を描くというテーマみたいですが、まぁ革命とはほとんど関係ないやん!という短編の方が多いですかね。

そんななかでも、”パンチョ・ビージャの甥っ子”を描いた、Rodrigo Plá監督の「30-30」、これは面白かったですね。 ちなみにパンチョ・ビーリャというのはメキシコ革命の偉人の一人です。うちの町ではそんな名前のメキシコ料理のレストランがあったりします(笑)甥っ子を演じた俳優さんの表情がたまらなくいいです。

Jorge y Sofía Riggen監督の「Lindo y Querido 」これも、途中の展開にケラケラ笑ってしまいました。全体的にはプロットが甘いと思いますが、アイディアが最高です。

そして、私が一番気に入ったのはMariana Chenilloという女性監督の「La tienda de raya 」です。俳優さん達の演技が絶妙。女優さんが…する場面で思わずえっ?となります。非常によく出来てる。そして、感情の微妙なやりとりが、視線を通じてよく伝わってきます。また最後のたくましい事。

マイディア♡ガエル様の作品は、うん、まあまぁですかね。子供たちが出てきます。彼は今南からメキシコに渡ってくる(そして抜けて北を目指す)移民に関するドキュメンタリーを撮影にかかわっているようで( http://bit.ly/c1wkMx )、完成が楽しみです。


それぞれの短編映画の監督とタイトル名は以下の通り。

La Bienvenida - Fernando Eimbcke
Lindo y Querido - Jorge y Sofía Riggen
Lucio - Gael García Bernal
El Cura Nicolás Colgado - Amat Escalante
Este es mi reino - Carlos Reygadas
La tienda de raya - Mariana Chenillo
R-100 - Gerardo Naranjo
30-30 - Rodrigo Plá
pacífico - Diego Luna
la 7th Street y Alvardo - Rodrigo García



2010年10月15日金曜日

なんて後味の悪い映画だこれ…『The Social Network(ソーシャル・ネットワーク)』

私、Facebookのアカウントも持っていないんです。この映画が予告編で流れても全然興味持てなかったのですが、公開前の批評があまりにも評判が良かったので、思わずオープニングの日に観に行ってしまいました。自慢気に言うことじゃないですが私がオープニングの日に観に行ったことなんて…まず記憶にないくらいの珍しい事なんです。




そんなに気合いを入れて観に行ってしまったのですが、観ながら「えーこれが?」「なんで?」という疑問を拭いきれませんでした。見終わった後の後味の悪さ。確かに革新的なのかもしれないけど、こんな居心地の悪い映画、好きにはなれないな。


【あらすじ(軽くネタバレ)】
マーク ザッカーバーグ(Jesse Eisenberg)はハーバードの学生。
エリカ(Rooney Mara)と学校近くの店でデート中、彼女を怒らせてしまい、あっという間にフラれる。その腹いせに、マークは部屋に帰ってすぐネットの日記にエリカがいかにひどい女かを書き連ねる。そしてハーバードのシステムをハックして、女の子二人の写真を比べてどちらがいい女かを投票するサイトを作る。

女の子達から敵視されると同時に男性には一目置かれる存在となったマークは、Winklevoss兄弟達から、新しいウェブサイト「ハーバード・コネクション」を作るための技術者になって欲しいと頼まれる。引き受けた彼はしかし、そのアイディアを利用し自分とルームメートのエドアルド(Andrew Garfield)とで新しいウェブサイトを作る。それが「Thefacebook」であり、そのサイトはたちまちハーバード中の話題の的になった。そしてFacebookは異常な勢いで拡大していく…



【解説・感想】
「市民ケーン」になぞらえられた公開前レビューがいくつも出たというこの「ソーシャル・ネットワーク」。なぜこんなに話題になり、なぜこんなに評判がいいのか。
それはやっぱり、今や世界に冠たるFacebookが噛んでるからだと私は考えますが、どうでしょうか。

創業者マークは最初からこの映画を支持しない立場をとっていて、あくまでもフィクションだと言っていますよね(まぢでこの映画を伝記だと言われたら私なら世界中を訴えるレベル)。とはいえ、今や多くのひとが毎日訪問するサイトに関する映画という事で、どうしたって気にならないわけはないです。「フェースブック」とつくだけでも莫大な宣伝効果だと思います。

そして確かに色々新しさが目に付く映画でもあります。
受け売りですが、シナリオというのは普通1ページで映像に直すと1分なんだそうですが、この映画では9ページを4分半で見せているそうです。つまり、普通の倍の内容が詰まった映像だということですね。この調子で、内容が凝縮された話がずっと続くことの新しさ。

また、出演者達の演技の完璧さ。
演技とも思わせないそこに生きているように見える彼らの演技は拍手ものです。

更に、ひとを食ったようなこの主人公。また、わざと観客の心地悪いところに悪いところに誘導して行くプロット。毎日沢山映画を見ている批評家の人たちにとってはとても新鮮なんでしょうね。

ですが、ただのイチ観客でFacebookに思い入れもなんにもない私には、ここに出てくる人たちの誰にも感情移入出来なかったんですね。ルームメイト君だけは可哀相に思いましたが、あとはヤな人ばっかりですよ、、、
主人公なんてほんとにあす○ー○だとおもいましたよっ。女性の敵だ!!!エリカちゃんは永遠に彼をブロックし続けた方がいい(爆)


さて、日本の映画関係の人たちの間でもこの「ソーシャル・ネットワーク」は随分と話題になっているようで、一昨日はプレス向けの初披露があったみたい。そして今週になってから日本でも急にFacebookに登録している人が増えてるとか。
本物のマーク・ザッカーバーグ自身の態度がどうであれ、結局のところこの映画はFacebookのとんでもなく効果的な宣伝になっていることは間違いないでしょう。

ところで邦題の「ソーシャル・ネットワーク」というのと、原題の「The Social Network」というのでは、随分印象が違うように感じてしまいます。Theのある無し。



車の中で聴いている音楽(10月)

うわぁ、全然月初めでは無くなってしまいましたがカーステに入っている音楽のメモ。


1.The Life Pursuit  Belle and Sebastian
2The Pursuit  Jamie Cullum
3.   言葉にならない、笑顔を見せてくれよ くるり
4. ソウルボーイへの伝言  佐野元春
5. Tin Can Trust  Los Lobos
6.   剃刀乙女 青葉市子/ そして月と踊る 中山うり


1と2は偶然にPursuitという言葉が入るタイトルが並びました。

先月も3番目だったくるりは、アルバムを入れ替えました。「さよなら、アメリカ」と歌ったのが衝撃的でしたね(?)。別に衝撃でもないのか。。でも、さよなら、アメリカ、と思っている日本人はどのくらいいるのだろう?さよなら、アメリカと思っている国民がどのくらいの割合でいて、菅さんを国のトップに据える事を選択したんだろう。聴きながら、そんなことを考えてしまうのです。

新しいベスト盤「ソウルボーイへの伝言」はコピーせずに、CDをダイレクトに入れました(珍しい)。しっかり音を聴きたかったので。これをきくと、古い曲は古い曲でいいけど、新しい曲は新しい曲でいいなと思いますね。あっ、ものすごい平凡な感想だったかな(笑)でも内心を告白するとベスト盤はも…(以下略)

5は先月のまま。気に入っています。

6は、どちらも短めのアルバムなので1枚に2アーティストを入れてしまいました。
青葉さんは各所で話題ぽい新人さんということで、聴いてみたかった。日本で買ってきました。いちまんえんで買ったとはとても思えないギターの響きと、よく聴くと激しく切りつけてくるような歌詞が「剃刀乙女」です。
中山うりさん、ソニーからメジャーデビューしましたがいまひとつぱっとしなかったと感じました。「大体iTunesで名前が上がったひとなのに、iTunesに卸さないソニーではダメだろう」と内心思ってきたのですが、この度iTunesに帰ってきたんですね。どうでもいいJ-Popな世の中にあって非常にユニークな存在なので、またiTunesチャートを賑わせて欲しいです。



ソウルボーイへの伝言 The Very Best Of Motoharu Sano A Message to Soul Boyソウルボーイへの伝言 The Very Best Of Motoharu Sano A Message to Soul Boy
佐野元春

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2010年9月25日土曜日

これって男映画なんだろうね… クルーニーの『The American』

最近「金曜日は映画の日」と決めて勤勉に?見に行っているのですが、こちらに感想を書く方が滞っているので、さらっと短く書き留めたいと思います。





ジョージ・クルーニー主演の『The American』、アントン・コービンとクルーニーの共同監督となっています。
この映画に関しては、「あまりの展開の遅さに、寝た。」という複数証言を得ており、一方で「この夏最高の作品」というのもネットで目撃していたので、どんなだか自分で見に行ってみる事にしました。

【あらすじ(軽くネタバレ)】
ジャック(クルーニー)は、狙撃手。女性と山中にいるところを狙われ、逆に敵を仕留める事に成功するが、同時に恋人の事も殺してしまう。
イタリアに逃げてきた彼は、雇い主にコンタクトをとり、その指示でキャッスルベッキオという田舎町へ移動する。そこで女性の狙撃手マチルデのために、カスタムのライフルを誂えるという仕事を引き受ける。器用な手先でこつこつとライフルを仕上げる一方で、町の神父や、クララという娼婦と、徐々に親しくなっていく…


【感想】
結果:すごくお腹が空いていたので、寝る事はなかったです(笑)でも確かに、展開が遅い。ジャックが美しいイタリアの石畳の坂を登ったり降りたり、そこで何か起こるのかなぁと思いきや、たいてい何も起こらないw しかしそういう「何も起こらない」場面をどんどん積み重ねていく映画なんですね。だから内容量で言うと「これでもか」と詰め込む一般的ハリウッド映画の1/3くらいしかないのかもしれない。そういう無駄なシーンは映像的には非常にキレイで心洗われるようなのは確かなのですけど、あんまり続きすぎると冗長なのよねぇ。

女性陣が豪華な美人で、特にクララが登場したときには吃驚。イタリアの娼窟には、こんなないすばでぃなお姉さんが棲んでいるのかしらん?そしてベッドシーンはほとんどクララしか写してないんですけど、ものすごーくえっちでした(笑)

そういうところも含めて、これってやはり男性向けサービス映画の伝統に則ったフィルムなんじゃないでしょうかね?クルーニーが器用に道具をあやつり、銃を改造していく場面、ああいうのって男性陣が泣いて喜びそうだし、ぼーん、ぼーんとした肉体のお姉さまがさらりと脱いだりするのもそうだし、スナイパーという職業の孤独感に耐えて今にも砕けそうになっている姿も、「男のひとは喜ぶんだろうなぁ」なんて思わずにはいられなかったです。

プロットとしては、王道というか、収まるところに収まってどんでん返し的なものも全くないんで、退屈に思える観客が多いでしょうね。最後なんて「やっぱりそうなるんですよねっ」と内心つぶやいてしまいました。

ところでこの「The American」というタイトル。
ジャックはカフェでわざわざアメリカンコーヒーを頼んだり、ガム噛んでみたり、店で流れる曲が(浅学にして誰の曲かは知りませんが)♪the american~♪と聞こえてきたりと、いかにもアメリカ人である事を際立たせている。一方、見せる手法としてはハリウッドではなく、まるで古いヨーロッパ映画に憧れてつくったような作りな訳です。かつ舞台はイタリア。
そんな欧州風の映画の中でわざわざ「あるアメリカ人」と謳った、それはアメリカの映画を冷めた目で見つめている作成陣の、姿勢の表れなのかもしれない、と思ったりもしたのでした。

2010年9月24日金曜日

ニール・ヤングの新譜「Le Noise」が全曲聴ける

この秋はロック大御所のアルバムが沢山出ますねぇ。ディラン、スプリングスティーン、クラプトン…。

そして、今度の火曜日に発売になるニール・ヤングのアルバム「Le Noise」が、nprのサイトから、全曲無料で聴けるようになっていました。

First Listen: Neil Young, "Le Noise"

twitterで情報を流したら沢山反応頂きました!ので、日本からもIP制限なく聴けるのだと思います。

このアルバム、まだ予約していなかったので、nprの広告からアマゾンに飛んで買いました。nprに直接寄付をするかわりに、ここのリンクを通して買うというのも、一つのサポート方法ですね。今度から余裕があればそうしよう!

ニールヤングといえば、去年の夏にスピード違反で捕まったとき、何を隠そう「Fork in the Road」をガンガンにかけてたんですよね〜(^^;) あれは捕まったのはやっぱあの音楽のせいだと思う(と、人のせいにする)。この歳であんなガンガンのアルバムを作るなんてヤバい人よね、ニール(爆)

2010年9月12日日曜日

海外文学ファンはたった3000人?

twitterで白水社さんから面白いリンクが回ってきました。
豊崎由美さんのエッセイ「豊﨑由美「全国3000人の海外文学ファンを代表して トヨザキ社長が提案!“ガイブン仲間"を増やすには?」

海外文学への情熱を語り、また海外文学がなぜ敬遠されるかを分析した豊崎さんのこのエッセイの、締めに衝撃的な文があります。

以前、文芸誌の仕事で、各社のガイブン担当編集者に取材をしたことがあります。その時、皆さん口を揃えていたのが「海外文学読者のコア層は三千人」という現状認識


えっ、3000人?

ということは、海外文学ファン全員が手に取るような話題本でも、初版二千部、売れて千部増刷って感じでしょうか(笑)実際にはほぼ全員に売れる話題本なんてまずないでしょうから…

考えてみたら私自身は海外文学を読まないわけではないけれども、でも「コア層」では決してないですね。好きな作家や映画化された作品を中心に年に10冊くらいかも…ってひょっとしてコアどころか普通以下の読者なのでは(汗)

このエッセイで推測されている、海外文学が嫌いな原因のひとつ「圧倒的に多いのが「名前が覚えられない」、これ、私も覚えられない派です。でもこの性格ゆえ、覚えられなくても”なんとなく(フィーリングともいう)”で読み切ってしまえる、これはいい加減さのたまものですねー。直近の記事のあの本も「へルシャーム、みたいな感じ」で全部読みきってしまい申した。映画の予告編のHailshamという字を見てやっとわかりました。やっぱりカタカナじゃダメね(そういう問題なのか!?)

「知らないところが舞台になってるから、雰囲気がよくわからないし共感もできない」という理由の方は確かに、聞くと悲しくなってくるなぁ。文章では細かい部分まではわからなかったりするけど、それ以上に、絶対に一生行かないような場所の景色が繰り広げされるんだもの。安価で旅行しているようなもんだと思うけれど。マルケスなんて読んで御覧なさいよ。

あと個人的に思うのは、やはり外国に関心があり更に外国語に関心がある人々は、海外文学の翻訳を通り越して原文で読んでしまう事。私、某語学サイトに登録しているのでわかります、語学熱心なみなさまの原文熱は素晴らしい!私のように読むスピード効率から、わざわざ日本から翻訳を取り寄せて読んでいるヘタレなんて肩身が狭くてしょうがありません。
そのあたりを考えると、言語学習者が少ない地域の文学または付け焼き刃では歯が立たない大長編小説、みたいなのでなければ翻訳を手に取る機会が減ってしまうのかもしれませんねぇ。

ところでこのエッセイで一番ニヤニヤしたのは

わたしが二十代以降に出合ったたくさんの海外文学の傑作に匹敵する小説を書ける、もしくは書く可能性を持つ現存作家が、日本に一体何人いるんでしょうか(あくまでも当社比ですが、今数えてみたら十八人いました)

数えちゃうんだ!しかも18人もいましたか(爆)
正直でいいなぁ。
個人的には、海外文学が売れなければ翻訳も、それもマイナーな作家であればあるほど、減ってしまいます。また読んだ事のある小説をまた再読したくなったときに絶版、ていうのが一番悲しい。そうならないためにも、若い方に沢山読んでもらえるようになるといいですね。私なぞはミュージシャンの人が薦めたり歌詞に混ぜた(たとえば「ジョニーは戦場へ行った」ですよ)本を読んだりしていましたけど、今の若いミュージシャンたち自身もあまり読んでいないのでしょうか?まず若向きの音楽をしらないのでご存知でしたら情報ください。


そして亀山先生の「悪霊」が出てしまいました。悪霊みんなでゲットだぜ(イミフ)

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2010年9月8日水曜日

この残酷な世界で子供達は守られている 〜イシグロ『私を離さないで』"Never Let Me Go"

私の名前はキャシー・H。いま31歳で、介護人をもう11年以上やっています。

象徴的なこのセンテンスで始まる小説『私を離さないで』。
現代イギリスを代表する作家カズオ・イシグロの代表作と呼ばれています。恥ずかしながら彼の小説を初めて読みました(ほんとに恥ずかしいね、、、)。ああ、イシグロってこんな緻密な文章と幻想的な世界を書く人なんだなぁ、と思ったら、後ろの柴田先生の解説によれば、作品によって全く書き方を大幅に変えてかつ成功している希有な作家なようです。一作でわかった気になってはいけないのね。

この単行本が出たときに各書評は、ネタバレを避けるために非常に難しい書き方をせざるを得なかったという話があります。この小説はミステリではありませんが、ありかたとしては、主人公の長い告白を通して、少しずつ、少しずつ、糸が解きほぐされて全貌が明らかになっていく物語です。自他共にネタバレに寛容な私ですが、今回はできる限り自粛しようと思います。

さきほど幻想的な世界と書きましたが、設定が今私たちが生きる世界とはずいぶん違うという意味で幻想と呼んでいるだけです。作者の筆は実に繊細にリアルに、物語世界の詳細を描ききっています。ただどことなく靄がかった、ぼんやりとした、掴めるようで掴めないような印象を残すのは、主人公にとって、ヘールシャムという学校がもはや思い出の中にしか存在しないからなのかもしれません。主人公を通しての回想、そこには今進行形で起こっている出来事のような鮮明な描写は望むべくもないのでしょう。

2010年9月6日月曜日

車の中で聴いている音楽(9月)

お友達が、「車の中で聴いている音楽」というのを公開していたので、面白いなぁと思ってやってみます。これを月はじめに一回ずつやっていくというのはどうだろう。

私の場合、長いと6ヶ月くらい同じCDを入れっぱなしのことがあるので、ずっと変わらずヘビロテしているっていうのもわかると楽しいかも。ちなみに車に乗っているときは大体CDがついています。最近はラジオは本当に聴かないなぁ。あと、買い物に出るのも子供の学校に送迎するのも車、なアメリカ社会ですから、大体一週間でアルバム4,5枚分は聴く感じでしょうか。チェンジャーに6枚のCDが入ります。

CD1:Corinne Bailey Rae 『Corinne Bailey Rae 』
このアルバム、アマゾンMP3で5ドルでした…。

CD2:Jamie Cullum 『The Pursuit』
曲がいいし、渋さとやんちゃさのミックス加減が女泣かせです。

CD3:くるり 『僕の住んでいた街 disc1』
音頭調の「東京レレレのレ」という曲で始まり、これが子供たちに好評。

D4:The Weepies 『Be My Thrill』
無料曲で2曲出ていて、それが気に入ったのでアルバムも買いました。ハッピーな音楽♪

CD5:Los Lobos 『Tin Can Trust』
好きだ。ジャケットもなんか格好いい!

CD6:Jack Johnson 『To the Sea』
ベストバイで発売日に買って、そのまま入れっぱ。そろそろ変えたいな。


普段はもうちょっと、日本の音楽とこっちのと、半々くらいなんです。
今は日本のが1枚だけ、は少ないほうですね。



Be My ThrillBe My Thrill
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iTunes-Pingが今のところ楽しくない

水曜日のジョブズのプレゼンもリアルタイムで見てた派として、iTunes10のPingも次の日に試してみました。
(後であげていくのですが)日本ストアは入力しかけて条件を見るといろいろダメかも?と思い中断、まずは米国ストアのアカウントで試してみました。
しかし、既に多くの人が言っているように、これは、少なくともこのままでは日本では受け入れられないでしょうねぇ。


1.実名制度って!
ジョブズは「プライバシーの設定はスーパーイージー」なんて言っていましたが、日本ではソーシャルメディアの実名制っていうのはまだ厳しいですね。姓・名、両方入力する必要があります。そして、今までストアにあげたレビューも、Pingで名前を入れた後は、実名で公表されると書いてあります。今までのレビューが実名になるのはちょっとね…。

ただし、変名をつかうことは可能みたいです。私は名字を頭文字だけにしたら、とりあえずそれでも通りました。…ただし、「決済情報もこの名前を使う」、とあるんですけど、これでクレジットカードの決済が通るのでしょうか?試していないのでわかりません。しかも入力済みのiTunesカードの残高がまだあるので、しばらくカードを使う予定がありません。


2.勝手に作られるお気に入りのジャンルとお気に入りの曲の自動選択がひどすぎる

ひどいなんてもんじゃないー笑。
ジャンルで言えば、「私はJ-Pop、ロック、ダンスがお気に入り」と決めつけられていたのですが、ダンスってなんだ???今チェックしても、自分のライブラリで「ダンス」というカテゴリに入っているのは、小西康陽がシナロケをカバーした曲、一曲だけなんですけど???その曲は確かにiTSで買いましたよ、でもどうしたらたった一曲しかないカテゴリが選択されてしまうのでしょうか。

それから、過去にストアで買った中から10枚のアルバム(10曲)が勝手に選択されていたのですが、それもひどい。人生史上で1曲しか買った事のない(しかも大分昔)アーティストのアルバムを勝手にお気に入りに決めつけてくる理由がわかりませんw どーゆーアルゴリズムなんでしょうか。せめてアルバム丸々買ったアーティストにしてよ。(この辺ですっかり嫌になって日本ストアでPingをオンにするのはやめました)

…という不満は私だけでもないらしくnprの記事にもなっているくらいです。
もちろん、自動選択ではなく自分で表示曲を選ぶ事もできるのですが、そもそも販売曲の少ない日本ストアでは、選ぼうと思っても選べない曲が少なくないはず。多くの人がより不満に思うことでしょう。


3.楽しくない
設定がどうにか終わって、とりあえずどんなもんか知るために…アーティストをフォローしてみよう!と、Dave Matthews Bandをフォロ!
けど…うーん、ぜんっぜん、楽しくない!ご本人たちはご本人たちのビデオやなんかについてコメントしたりアクションを起こしていて、そこに一般人が「いいね!」って言ったりする。要はそれだけ???今のようにデータがすくない間は、「んー、この一般人の人、私と好みが同じだわ、フォローしようかしら。」って気にもならないし。そもそも、プロフィールを公開している人が少ない。

それに、自分の持っている曲全部についていろいろ行動できればいいのだけれど、要はiTunesのストアに存在する音楽についてしかアクションを残せません。

そして大きな障害として、スパムが多かった。
今は大分ましになっているようですけど、最初のうちは外部ページに誘導するスパムばっかり?ってね。
イメージとしてはMy Spaceのアーティストページに近いですね。どこまでファンのコメントでどこまでがスパムかわかりかねます。


総括として現在のところ、ただのAppleの商業的なツールに過ぎないという印象です。「世界のアカウントと繋がれる」と言っても、リージョンではっきりストアが分かたれている以上、よその国の音楽を買えるわけでもないです。

開始から48時間で100万アカウントが登録されたというPing。これから盛り上がっていくでしょうか?私の考えでは、否、です。ソーシャルネットなんて、楽しさを演出できなければ、アクセスする事さえ億劫です。人々がよく使うiTunesというツールに組み込まれているという利点はあっても、あっさり廃れていくような気がしてなりません。

とは言いながら、これを読んでいる方でもしオンにしている人がいましたら、ぜひ相互フォローしましょう、連絡ください(笑)。


2010年9月5日日曜日

八木啓代さんライブ@アントン (Nobuyo)追記

ライブから時間が経ったのですっかり書き忘れていました。
今日、アフガンで身柄を拘束されていたジャーナリストの常岡浩介さんが解放された、というニュースを聞いて、ライブ中にこんな話もあった事を思い出しました。

八木さんが日本にいるときに常岡さんから、「八木さん、実は一人で行く勇気がないところがあるんですよ。一緒に行っていただけませんか?」と聞かれ、一人で戦場取材にのりこんでいくジャーナリストが行く勇気のないような場所ってどこよ、と思ったら…

ケーキバイキングだったそうです。。。

確かに日本の男性諸氏は一人で行きにくいもの?
しかしその時ダイエット中だった八木さん、無情にも「今はダメ」っと、断わったそうなのですが、そのすぐ後にニュースで知られたこの事態となり、

嗚呼、なぜ私はケーキバイキングくらい付き合ってあげなかったのだろう!

と、後悔したそうで。
解放されて、明日明後日あたりには日本に帰国されるんでしょうから、そうしたらゆっくりケーキバイキングを楽しんで欲しいものです。

2010年9月2日木曜日

Zapposというユニークな会社は仕事のあり方を変えるか。『Delivering Happiness』を読んで

とっても面白い本です。
タイトルは「Delivering Happiness」、Zapposというオンラインの靴販売業者のCEO, トニー・シェイ(Tony Hsieh)の書いた自伝&会社史の本です。…と書くと面白くも何ともなさそうなのですが、ニヤニヤしながら読める事間違い無し。な楽しい出来ばえの本です。

Zapposは日本には進出していない事もあってまだそれ程知られていないと思いますが、09年にAmazon.comの傘下に入ったことをご存知の方もいると思います。企業規模が違うこの買収に当たり、大手であるアマゾン側が非常に気を遣って、Zapposの従業員と顧客に向けてビデオメッセージを流しました(youtubeはこちら)。こんな事からも、アマゾンが非常にZapposを大事にしている事がわかります。

この靴通販、ZapposのCEOであるトニー・シェイ(Tony Hsieh)は、ビジネスの世界では買収前からユニークな企業文化と販売手口で注目されていました。ビジネスサイトでのインタビューなども多かったようです。日本でも時々、インタビューが公開されています(ここ とか)。この本もおそらく近いうちに日本語での翻訳が出される事でしょう。そうしたらもっともっと日本のメディアにも出てくるであろう、そんな個性的な経営者です。

すっかり前置きが長くなりましたが、この本の内容を少し紹介しましょう。




まず、トニー少年の子ども時代の話から始まります。

両親は台湾系で、大変教育熱心です。成績はオールAが当然, テレビは週に1時間しか見る事を許されず、音楽はピアノとバイオリンとトランペットとフレンチホルンを同時に習わされます。そんな中で彼が興味をもったのは「お金をもうける」事でした。100匹のミミズを買ってきた彼は、それを増やして「ミミズ牧場」を作り、一儲けする事を企みます。トニー少年は果たして上手くお小遣いを増やす事が出来たでしょうか?

また後には、雑誌の通信販売をしたり、自分で新聞を作って売ろうとしたりします。とにかく、一儲けするために工夫を惜しまない子どもだったのです。

大学を卒業した後、友人と起業して、LinkExchangeという会社を作ります。インターネットの創世期と重なって、この広告を売る会社は、あっという間に軌道に乗り、どんどん大きくなっていきます。買収の話も何度も舞い込みます。

…しかしある時彼は、利益を生み続けるこの会社に、興味を持てなくなっている事に気づきます。会社に沢山いる従業員の中に、顔も名前も知らない人が沢山いる事に気づきます。…一体、何が間違っていたんだろう?

2010年8月31日火曜日

八木啓代さんライブ@アントン (Nobuyo)その2

前回の続きとなります。
お腹もいっぱいになったところで、八木さん登場。黒のドレス姿です。ギターは西本諭史さん。

「Para Un Angel 」「 Lo Cierto Somos Nosotros」「Por Ti」「Versos De Guardia」「アルフォンシーナと海」「そら(ソウルフラワーユニオン)」などなど。本当にスミマセンすぐに記事を書かなかったので記憶が曖昧でございます。。。

中でもとてもよかったのが「泣き女 〜La Llorona~」。八木さんの本に登場するメキシコの作曲家マルシアル・アレハンドロの遺作となった曲だそうです。2009年に彼が亡くなったのは知りませんでした。マルシアルへの思いのたけを魂に込めた様な、そのタイトルも”泣き女”という曲を歌う八木さんの姿は忘れられません。

しかし、ここは「伝説のバックパッカー」八木さんですから(関係あるのか?)、歌だけでは終わりません。
曲の合間のトークがおもろい。

県民性の話。関西では夏になったら「グリーンティ」、と聞くとあのお茶屋の店先で冷え冷えのあれ、と思うわけですがあのグリーンティは関東ではないですという話(←海外に住んでるのでよくわかります)。「この曲を歌うと関西では絶対CMの曲だと言われる」という曲の話。ワールドカップで試合が始まると日本人はtwitterでガンガンつぶやくけれどラ米の人は全くつぶやかなくなるという話。日本の人はラテンアメリカは怖いところだと思うけれども、日本の自殺率をみると、殺される率より日本の自殺率の方がよほど高いということ。…と、なるほど〜なお話が色々聴けました。

写真は、どうなんでしょうか。他にも撮られている方がいらしたので撮ってみましたがwebアップはまずいのかな?(もし都合が悪いようならすぐに外します)




歌とトークとそして御馳走と、で、とても満足な夜となりました。


八木啓代さん新刊です。…といっても私も日本で7軒くらい本屋を探したけどどこにもなかったし、アマゾンも品切れ状態が非常に長くてまだ読めていません。もっと増刷してくれ〜





2010年8月27日金曜日

八木啓代さんライブ@アントン (Nobuyo)

ああ、これも1ヶ月半前の事になっております。
7月15日、伝説のバックパッカーにしてラテン歌手、ジャーナリスト(さて、どの肩書きが一番先に来るでしょう?)の八木啓代さんのレストランでのライブに、うまく日程があったので行ってきました。

八木さんの事はパソコン通信時代にNiftyで人気の連載を持っていらした時に知りました。なかなか知られる事の無いラテンの国の事情の中の中まで、おもしろおかしい筆致ながらズバズバ書く文章で大人気!
それから著書を数冊拝読、一度ライブに行ってみたいなぁと思いながら、私も日本での滞在期間が限られておりまたメキシコシティまでコンサートを聴きにいくというのも現実味がないので(笑)今回、日程が合って初めてライブを聴けました。

会場は伊丹のイタリアンレストラン、アントン。そもそも伊丹に行った事が無いので初めてのお店でした。満席で30席くらいでしょうか、手頃なサイズのお店…の中、案内して頂いたのはステージ前のとってもよいお席!でした。

あ、あのぉ、明らかに一見さんで、しかも八木さんライブの常連でもない私達、こんな一等席で申し訳ないのですけど。。。しかも予約を入れた時も「まだいけますか?」と聞くと「かなり一杯ではあるんですけど…」と仰ってたのに。ああほんとスミマセン、とせめても珍しくアルコールを注文。軽食つきということでしたのに、ボリューム満点でサラダ+鹿肉のパスタ+パン+デザート、コーヒーがついていました。サラダはワカモレ風のアボガドディップやトルティーリャチップがついていたのは今日の演奏に合わせているのでしょう。

そしてアントンさん名物の鹿肉のミートボールのパスタ



告白しましょう。実は、軽食だと少しお腹がすく?と予測して、待ち合わせたところでパンを食べてしまっていたので、こんながっつりなフルサイズのパスタを予測していなかった私達の胃袋。美味しかったのですが、最後の方はスピードダウン…けっ、決して、味が気に入らなかったわけではないのです、はい。
ちなみに鹿肉は人生で初かもしれません。感想は、こんな言い方はなんですが、「とても普通」でした。ひき肉になっているというのもあるのでしょうが、牛だといって出されたらそれで納得するお味でした。普通の牛よりあっさりしていて、癖の様なものは全然無いです。鹿のお肉ってとてもヘルシーなんだそうですね!


あれれっ。もう、前書きだけですっかり長くなっちゃったゾ。
記事を分けて、ライブの部分は後半で書きますね。



八木啓代さんの音楽、アメリカからはiTunesやAmazon MP3にて購入できます(最近知ったの)。

暫定今年のNo1映画『瞳の奥の秘密』~El Secreto de Sus Ojos~

ずいぶんと間が空いてしまいました。
書く事は沢山あるのに全然追いついていないです。はい、映画に本に音楽に、ちゃんと向き合って記録を残したいと思います。

2010年のアカデミー賞外国映画賞を受賞したアルゼンチン映画、『瞳の奥の秘密』~El Secreto de Sus Ojos~、都会の方では春には上映があった様なので、もううちの町には来ないものだと思っていました。ところが日本から帰ってきたら丁度やっていて、ラッキーだなぁ、と。





映画が始まって驚きました。
こんなに丁寧な、こんなに端正な映画が見られるとは!
アカデミーで、予想されていなかったこの作品が賞を勝ち取ったのも納得、納得。それだけの説得力のある実力映画でした。



【あらすじ(軽くネタバレ)】
刑事裁判所を定年退職したベンハミンは、25年前に起きたある事件を扱った小説を書くことを決心し、当時の女性上司で今は判事補のイレーネを訪ねる。その事件とは、1974年、銀行員の夫と結婚したばかりの美しい女性が自宅で強姦・殺害された事件であった。捜査開始後すぐに、修理していた二人の職人が逮捕されるが、明らかにえん罪である。被害者の自宅でベンハミンは、夫妻のアルバムに残るある男の瞳の妄執に気づき、その男を捜そうとするが難航する…。一方で当時のベンハミンの心を占めるの別の思いは、美しい上司イレーネに寄せる、いわば身分違いの思慕であった。


【解説・感想】
奇をてらわない、非常にクラシックな作りの映画でした。
謎解きものとして捜査に一本筋を通しながら見せる一方、ベンハミンと上司イレーネの、25年を超えた関係をも巧みに絡ませて、飽きさせません。捜査に緊張感を失わないようにしつつ、かつオールドファッションな笑い(それは今時の映画では滅多にお目にかかれない種類のくすっとしたおかしみ)を所々にのぞかせます。

2010年6月9日水曜日

何とか最後まで読破したぜ!『カラマーゾフの兄弟(The Brothers Karamazov)』

最近のアマゾンさんのページというのは実に便利な事に、「あなたはこの本をいついつ買いましたよ」というのを教えてくれて、子供が読んでるコミックの続き巻を買う時なんかに大重宝なのですけど、それで今見たら、この本を買ったのは2007年9月ですと。「カラマーゾフの兄弟」新訳ブームのまっただ中でした。

はい、買った時は一巻の、ゾシマ長老とフョードルの顔合わせの場面で挫折。「このおじさん(フョードル)は、こんないい人な教会の長老様になぜこんな口をきくんだい!!!」と、いやになって辞めてしまった、ううう。
しかし…そのまま2年近く放置していたこの本が本棚に5冊仲良く並んでいるのを目にし、「いや、もいちどトライしてみるべ」と最後まで読破を目標に再び本を開き、今回は3週間ほどで読み終えました。

あーーー、この達成感(爆)!!! 母ちゃんやったよ!みたいな。

考えてみたら露文学の小説をまともに読んだのはこれが初めてだったり(ああでもイワンのばかとツルゲーネフくらいは読んだ事あったっけ)。確かに露文のイメージ「名前が長い、変化する、覚えきれない」がほとんどなくて、また「どよーんと重暗い」というイメージもなく、すらすら気持ちよく読み終えられたのは、有名になったこの亀山先生の新訳さまさまです。

2010年5月10日月曜日

おれたちはNo.1じゃない!ランキングの中のアメリカ

We're (not) No.1と言う記事をネットで見つけました。「おれたちは一番じゃない!」といったところでしょうか。世界の中でも先端を行くと思っているアメリカ人を皮肉るような世界の国ランキングを集めたものですね。私にとっては、アメリカだけでなく日本の事も気になるところです。




まず、元々悪評高い医療関係から見ていきましょうか。
平均寿命は30位、ヘルスケアの質37位、乳児死亡率31位。このあたり、日本は上位ですよね。

インターネットのスピード15位(これは日本は1位!でも年ごとにすぐ変わりますね)、一人当たりの携帯の数16位(日本は73位…意外です)、再生可能エネルギーの利用27位。

教育の効果35位、科学的な知識33位。

そしてアメリカの看板である民主的政治は17位、報道の自由41位、囚人の数40位、汚職の少なさ22位となっています。

さすがにランキングで上位にならないような統計ばかりを集めてはいるのでしょうが、アメリカ人はこの結果を見てどう感じるのでしょうか。さすがに昔ほど「俺達が色んな分野で世界のリーダーだ」なんて考える人もいないでしょうが、でも少々へこんだりするのかな。

逆に日本人がこういうランキングを見ると、「あれ?意外といいじゃん」というところを見るよりも「ああやっぱりダメなのね」って、ガッカリするところばかり、目にいってしまうような気がします。

昔、同じESLクラスにいたドイツ人の女の子がものすごくはっきり物言う子でした。
彼女、よくご近所のパーティなんかで「どうだい、アメリカは?」と聞かれて、「すっごく遅れていてビックリしたわ。洗濯機なんかドイツの20年前のやつみたいだし、未だに銀行小切手で光熱費払ったりとか、携帯電話も型古いし受信しても料金取られるなんて最低だし…」と、延々と続けたらアメリカ人は皆むっつり黙り込む、というのをクラスで聞いていて何度も苦笑いを浮かべちゃいました。

まぁ、そう思ってはいても、本人たちにはなかなか言えないのが日本人(笑)そうやって大抵のヨーロッパの人たちと比べると、アメリカ人ってホントはすごく「気ぃ遣いしぃ」で、社交的でフレンドリーな人たちなんですよねぇ。ということで、「相手へ気を遣う」というランキングでは上位に入れてあげてくださいよ!

America: We're (not) No.1

2010年5月8日土曜日

6本指の大作家を探す静かな冒険、パハーレス『螺旋』"El Paso de la Hélice"

twitterというのは不思議な場所で、そこでの出会い(フォロー、フォロられ)は偶然的要素が多いでしょうのに、流れてくる各種情報が自分の守備範囲にぴったりハマる事が往々にしてあります。この600ページを超える分厚い本のことも、流れてきたつぶやきで知った次第。




螺旋螺旋
木村榮一
サンティアーゴ・パハーレス

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【あらすじ】
マドリッドにある出版社の中堅編集者ダビッドは、ある日社長から密命を受ける。社長によれば、その出版社の大ベストセラー『螺旋』の作者トマス・マウドは実は匿名の作家で、一方的に原稿を送ってくるだけで、どこの誰とも分からないのだという。続編を書いてもらう為にどうしてもその作家を探し出さねばならないという社長の命により、ダヴィッドは数少ない手がかりを手に、山中の小さな村へ旅立つ…

【解説・感想】
始まりと中盤と最後、随分と印象が違ってくる本でした。
最初の、じりじりと暑いカリブの島ではそれなりの手腕を見せる優秀な編集者としてのダヴィッド、そして作家を見つけられないばかりか何もかも上手くいかないダメ男になったダヴィッド、そして最後は…もちろん語りませんけど(笑)、これは謎の作家探しの小説であると同時に中年男の成長物語でもあるんですね。

現状としての移民問題、DVD『闇の列車、光の旅』”Sin Nombre"

アリゾナの「嫌・移民法」が大きな話題になっていますね。
アメリカに住む不法移民というとまず真っ先にメキシコ系移民が思い浮かぶ人が多いと思いますが、実際にはメキシコより南、中米から北へ向かって、幾つかの国境を越えアメリカを目指す人々もいます。この映画のヒロインは、ホンジュラスからアメリカを目指します。





【あらすじ(前半ネタバレ注意)】
ホンジュラスに住む女の子サイラのもとに、アメリカに出稼ぎに行った父が帰ってくる。アメリカで出来た二人の娘と一緒に暮らそうという父と一緒に、彼女は米国を目指すことにする。
一方、カスパルはメキシコ、チャパス(南部の州)の、ギャングメンバー。12歳の少年スマイリーを組織に紹介し、自らもギャングの中に居場所を見いだしていた。その二人が、北に向かう列車の屋根で出会う。片方は強盗する側、片方はされる側として。そしてその事件は起こる…


【解説・感想】
とても重くて心が痛い映画です。
これは映画館で座っては見ていられなかっただろうなぁ。しんどかった。
ヒスパニックの人の命の軽さ、これはほとんどのアメリカ人や日本人にとっては想像するのも難しいことで。私たちとは違い、あっという間に命が無くなっていく…

2010年5月4日火曜日

【映画】How to Train Your Dragon「ヒックとドラゴン」

アバターからこっち盛り上がった、3D映画人気。
アリス、タイタンと来て公開になったこの映画「How to Train Your Dragon(ヒックとドラゴン)」は、時期的に不利だったのかもしれません。予想を下回るオープニング興業で、ドリームワークスの株価を8%下げたこの映画。し、しかしなんと、オープニングのあとも口コミでランキングを踏ん張り続け、常に2〜4位をキープしているという粘り強さ。とにかく評判がいいので行きたいなと、小1のお尻をはたいて宿題させてから、行ってきました。





【あらすじ(若干ネタバレ注意)】
生きるために、襲来するドラゴンと闘い続ける宿命にある、バイキングの集落。主人公のヒカップ(シャックリの意味)は、村長のストイックの息子。腕っ節強くドラゴンとの闘いを指揮するお父さんと違って、ヒカップは華奢で力も弱く、鍛冶屋の見習いをしている。
石矢にからまったドラゴンを、池のほとりで見つけたヒカップはそのドラゴンを殺さずに助ける。そしてドラゴンにトゥースレス(歯無しの意味)と名付け、魚をあげたりして次第に仲良くなる。トゥースレスの尾翼が片方欠けているのに気付いた彼は、自分で尾翼や鞍を作り、トゥースレスに乗って、空へと飛び出した。
同じ頃、バイキングの戦士になる訓練を受ける事になったヒカップは、トゥースレスを好きなあまり、訓練用のドラゴン達と闘う事も気が進まなかった。そして彼はそのうち、他の人々には無い特殊な能力を発揮し始める…


【解説・感想】
ああ、面白かった!これ、大人にも子供にも断然お薦めの映画です!

2010年5月1日土曜日

クーリエ・ジャポンの3月号の特集「貧困大国の真実」

日本からだから届くのに時間がかかる上にブログ放置していたのでいつの話やら…
雑誌「クーリエ・ジャポン」の3月号、「貧困大国の真実 ーオバマ大統領就任から1年ー」これ面白かったです!責任編集は岩波新書の「ルポ 貧困大国アメリカ 」の堤未果さんです。
編集方向としては新書の「貧困大国アメリカ」と同じ路線ですが、オバマ大統領就任以降の変化を伝えています。

特に私が気になるのは、医療改革。
法案は一応通ったものの、結局骨無しの民間皆保険になってしまいました。
先進国中最低と言われるこのアメリカ医療の諸悪の根源は、医療保険が民間である事です。ま、他にも私立病院が株主を喜ばせるために儲け主義に走っていたりとか色々ありますが、やはり一番の問題は医療保険会社が民間経営であるために自社の利益を目的にしている事、それゆえ本当に医療を必要としている人が保険に入れない、あるいは保険が支払われないという異常な事態が起こっていることでしょう。

オバマの医療改革法案の推移について、このような記述があります。

2010年4月30日金曜日

マリアッチ風のアンコール!Norah Jones @Plaza Theater

(前記事はこちら
拍手を続けていると、かなり早いうちにバンドはステージに戻ってきました。
すると何か客席に異変が!
一階席のみんなが、携帯を手に前中央に押し寄せてる(笑)
ええっ、アメリカって、アンコールになったら写真撮ってもいい決まりなのっ!?すっごいびっくりしたなぁ。まぁ私は二階席だし撮らなかったけどね。

そしてノラとバンドのメンバーがステージ真ん中の一本のマイクを取り囲むように肩を寄せて演奏し出したのが、「How Many Times」。ものっすごいマリアッチ風のアレンジでやってくれました。特に間奏のところ、ギターのスモーキー・ホーメルが、いかにもな演奏をするんですよ。服装も、中に入っている間に黒のジャケットなんか着ちゃっていかにもそれ狙い(笑)

この曲、コステロと一緒に演奏している動画がありましたよ。





今回はもっとメキシカンだったってことで(爆)

そして最後の曲は、「Come Away With Me」で、ライブは終わりました。


「The Fall」の曲は前半特にアップテンポでやったという事もあり、あっという間に思えるコンサートでした。内容は濃いのだけど、もっともっと聴いていたいと思いました。


それから、顔と声の印象からなんとなくほんわりしたお嬢さんというイメージだったノラ・ジョーンズ、濃い化粧で険しい顔で歌う事や客席からの声をさっとキャッチして豪速球(笑)で投げ返すようなMCに、新発見な感がありました。
あと思ったのはノラの胸の谷間がすっっごいということです(爆)いやぁオペラグラス越しにしっかりと見える、やわらかな曲線で出来た峡谷のような胸の谷間でしたわ。


「前のツアーの移動ではこの町を通りすぎたんだけど、ここでライブはやらなかったから」と言っていた、ノラ・ジョーンズ。このアルバムのツアーで来てくれて有り難う、The Fallは大好きだから。あなたの声を聴けて、心から良かった。


ライブのセットリストは続きから。

生でこんなに歌が完璧な人を初めて見たーNorah Jones @Plaza Theater

2010年4月29日、ノラ・ジョーンズ@プラザ・シアター、よかったですっ!
ノラ級のの知名度の人がプラザ・シアターみたいなこぢんまりホールでやるなんてチケット取るのは無理だろうなと思っていたけど、チケット発売時間ぴったりにオンラインでアクセスしたら取れました。やっほーい!そこから首を長くして待っていました。こっちに来てからコンサートといえるコンサートには行っていないので本当に久しぶりでした。

開演は8時。結構遅いです。でも本当のジャズクラブとかでやるのならもっと遅いのかなぁと考えながら待っていました。
最初に出てきたのは前座のサーシャ・ドブソン(Sasha Dobson)でした。サーシャ、ノラのバックバンドにいるんですね。ノラに迫るくらいスモーキーないい声です!
「今日すっごい風だったよね。エルパソっていつもこんななの?」
「私のおばあちゃんがメキシカンなのよ。アメリカの別の場所でメキシカンの人に会えるって楽しいね」
Gus Seyffertと二人、自分たちでエフェクトかけながらの演奏、手作り感溢れるステージでした。特にスチールギターを使った曲がとても心に残りました。

サーシャのステージが大体30分。そこで休憩を挟んで、その間スタッフは念入りなチューニング。
ノラが登場したのが9時ごろでした。やっぱかなり遅いね。

そしてついに出てきたノラは、小柄!
かついだ赤のフェンダーが体からはみ出ています。

2010年3月28日日曜日

【映画】The Last Station (ラスト・ステーション)

ロシアの文豪トルストイの最晩年を描いた映画、The Last Station監督はマイケル・ホフマン。

この映画、行こうか行くまいか3週間くらい迷っていたのですよ。結局最終日になりましたが行ってきて本当に良かった~。大好きだったよーー。オスカーにヘレン・ミレンとクリストファー・プラマーがノミネートされていましたが、そうじゃなかったら絶対行かなかったでしょうね。この映画に出会わせてくれて、サンキュー・アカデミー♥







ブログは日記かメディアかの2つに分かれている

読んでなるほどな、と思ったので記録。
『百式』の田口元さんのセミナー内容がデジマガにて掲載されていた中から。

田口さんは「ブログは日記かメディアの2つに分かれており、人に取り上げられるものがメディアであり、取り上げられないものは日記」だとした。

メディアと日記。
そう言われてみればそうで、基本的には他の人の日記ってのは続けて読む気持ちは余り持てないですね。私などは調べものでそれなりの数のブログを目にする事も多いのですが、そのまま登録して読むことは実に少ない。

もっとも例外はあって、日記を書く人そのものに価値がみいだせれば、その日記を読み続けるでしょう。スポーツ選手や芸能人の日記を読む時は、その書き手に価値を見いだしているから読みますね。あるいは例えば家族なら孫の顔写真が載っている日記を嬉しく読むだろうし、友達の公開日記なら興味を持って見に行きますね。
さすが百式さん、的を射ています。

確かにtwitterではメディアにはなりきれない、多くの新聞や雑誌がやっているように、メディアの集客入り口にはなれますけど。

引っ越しして新しくここを始めるタイミングで、いいキーワードをもらった気がします。
ブログを書く時にはメディアと日記の事を頭において書いていくようにしてみたいですね。





なぜかファンキーな写真を。

2010年3月25日木曜日

もっと変態を!【映画】Alice In Wonderland (アリス・イン・ワンダーランド)


映画、アリス・イン・ワンダーランド3D、行ってきました!
ティム・バートン+「あのアリス」ということで、キリンのように
クビを長くして待ってきました。はい、期待出来るようなプロモーションぶりでした。
し・か・し…

もちろん、悪くはなかったですよ。
でもね、私の期待では、もっと、もっと、もーーーーっと、変態チックだったの〜。
なぜなら、料理人がティム・バートンですよっ。そして世に名高いロリータ妄想物語のアリスが素材ですよっ。
どれだけ見せてくれるのか、期待に胸膨らむじゃないですか。でも、配給がディズニーだったら、あれくらいで限界なのかもねぇ。
と、少々残念に思ってしまいました。
以下いつものレビュースタイルで書きますが、ネタバレを含みますのでいやなかたは飛ばしてください。


2010年3月22日月曜日

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エルパソ生活ブログ。


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困った時のアルク頼り。えいじろさんには一生足を向けて眠れませぬ。
Lang-8
外国語作文の練習に、母国語で交換添削。とんとご無沙汰です…
英語瞬発力をつけるために
カラオケ気分で英語を聞き取る、細かいところがムズカシー!


start(あれ、聞き覚えがあるような…)


あれ、聞き覚えがあるようなタイトルだと思われた方、あなたは私の古い友人です(断言)。
そして、新しいお友達も、ようこそ。

気分を変えて、契約は何処かに捨ててしまおう。
新しく始めるんだぜ。